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区議会質問
国民健康保険議案 反対討論(森とおる)
2014/03/20

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、第5号議案「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について可決に反対の立場から討論を行います。

 本議案は、来年度に向けた特別区の保険料率を改定するとして、
 基礎賦課額と後期高齢者支援金等賦課額の所得割率を8.36%から8.47%へと0.11%引き上げ、均等割額を41,400円から43,200円へと1,800円引き上げる。
 今年度から実施している減額措置を引き続き実施し、旧ただし書き所得から、その25%を減額する。
 そして、これまで一般会計から全額繰り入れていた高額療養費分を減額措置に要する費用と合わせて4分の1を保険料賦課総額へ算入する。
 賦課限度額を65万円から67万円に引き上げる。
 この結果、一人当たり保険料は、98,465円から103,103円へと4,638円の上昇となります。
 また、介護納付金賦課額の所得割率は1.69%から1.64%へと、わずかに下がり、均等割額が15,000円から15,300円へと300円の引き上げ、賦課限度額が12万円から14万円へと引き上げることにより、一人当たり保険料は、30,288円から30,756円へと468円の上昇となります。
 今回の大幅値上げに加え、4月からは消費税大増税が待ち構えています。すでに限界を超えている多くの国保加入世帯は、いっそうの大負担増を強いられることになるのです。
 以下、反対の理由を述べます。

 反対の理由の1点目は、値上げが区民のくらしに重大な打撃を与えるからであります。
 国民健康保険料の賦課方式が、住民税方式から旧ただし書き方式に変更されたのは2011年度でした。旧ただし書き方式になった結果、低所得者や、子育て世帯、障害者を支える家族など、特に保険料が大幅にはね上がりました。これを回避するとして行なわれた2年間の経過措置も今年度は廃止し、わずかばかりの減額措置にしてしまいました。
 来年度の1人当たり保険料は、住民税方式だった2010年度と比較して、93,105円から103,103円へと実に1万円もの値上げとなり、10万円の大台をとうとう超えてしまったのであります。
 本区の国保加入世帯は、2013年3月末時点60,679世帯で、そのうち所得が200万円以下の世帯は、47,598世帯と約8割を占めています。所得のない世帯についてみると24,823世帯もあり、国保加入世帯の約4割にも上ります。この現状を区は、「負担能力の低い所得層が多く加入している実態となっており、国民健康保険制度が抱える構造的問題の1つ」としていますが、経済基盤の弱い世帯がこれほど多いのであります。またしても大幅に値上げするというのです。
 区は、低所得者には減額措置を実施していると言いますが、収入別・世帯構成別の保険料を試算した資料によると、給与所得者65歳未満3人世帯200万円では、168,082円から195,643円へと27,561円も上昇、収入の1割にもなるのです。消費税や光熱費が上がる、物価の高騰、その中でどうやって暮していけというのでしょうか。区民のおかれている深刻な実態に背を向けているということです。

 2点目の理由は、保険料の大幅上昇で滞納世帯が増加し、医療を受けられない区民がますます増えるからであります。
 これまで述べてきたように、経済基盤の弱い加入者が多い国保において、保険料の値上げは耐えることのできない痛みであり、これ以上払えないという世帯が増えることになるのです。昨年6月、区は確定した国保料値上げの通知を発送しましたが、受け取った区民から「収入が上がっていないのに、なぜこんなに上がるのか」など、わずか10日間で2500件もの問い合わせがあったのです。保険料の滞納世帯割合は、昨年6月時点で3割にものぼります。滞納すると保険証が取り上げられます。短期証発行数は3,597世帯、資格証発行数にいたっては3,110世帯で23区中、第2位と容赦はありません。このような状況にもかかわらず値上げをしたら、3割の滞納者数はさらに増えることになります。保険証を取り上げられてしまい、病気になったらどうなるのだろうかと不安を抱きながら、なけなしの現金を握りしめて窓口を訪れている区民の気持ちを考えたことがあるのか。まさに高野区長の政治姿勢が問われます。

 3点目の理由は、国、自治体が責任を後退させ、国民皆保険制度の根幹を揺るがしているからであります。
 来年度の値上げには新たな大問題が含まれています。後期高齢者医療制度同様に、広域化を目指すことを理由に、これまで一般会計から繰り入れていた高額療養費を毎年4分の1ずつ4年間かけて、全額を保険料賦課総額へ算入し、保険料に跳ね返る仕組みを導入したのであります。来年度の1人当たり保険料の値上げ4,638円の半分ほどは、この影響によるものです。強行されたら、4年後はこれだけで9千円以上の値上げとなってしまうのです。
 国は、長年にわたり国庫補助を削減してきました。1984年に、医療費の45%とされていた国保への定率国庫負担を38.5%に引き下げ、その後も国保の事務費や保険料軽減措置などへの国庫負担を縮小、廃止してきたのです。その結果、国保の総会計に占める国庫支出の割合は、1984年度の50%から24.1%に半減しているのです。また、2012年度の23区の法定外繰入金は796億円ですが、2年間に約100億円も減らしているのです。国も23区も負担を減らし、その負担を国保加入者にばかり押しつけるやり方は間違っています。これほど無責任なことはありません。国保料が上がれば、払えない区民がますます増えることは、はっきりしています。加えて消費税大増税と社会保障大幅削減が待ち構えています。さらに収納率が下がり、国保制度そのものが維持できなくなってしまいます。今こそ国と自治体が責任を持ち、住民の命と健康を守るために、そして制度を維持するためにも国庫負担の大幅増額をおこない、安定した国保財政にするために責任を負うべきです。それが実現するまでは、区が一般財源を投じてでも保険料を引き下げるべきです。

 委員会審査で、他会派議員の、「医療費が上がっている。制度維持のために仕方が無い」というような意見が出ましたが、国保加入者の置かれている実態から背を向けるものであり、それこそ制度そのものを破綻に追い込むものに他なりません。国民健康保険制度は、国民皆保険の理念のもと、高齢者や自営業者、失業者など経済基盤の弱い人々が安心して医療を受けられるためにつくられた制度です。財政投入しなくても良い、保険料は高くても仕方がないというのは、結局、国の責任と保険者である地方自治体の責任をなし崩しにするものです。保険料が高すぎて払えない人が増えれば皆保険ではなくなるのであります。

 よって、第5号議案「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について可決に反対します。
 以上、討論を終わります。