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区議会質問
 
「豊島区営住宅条例の一部を改正する条例」の可決に反対の立場から討論(渡辺くみ子議員)

 続きまして、第63号議案「豊島区営住宅条例の一部を改正する条例」の可決に反対の立場から討論します。

 この条例案は区営住宅・福祉住宅の利用申請者等の資格要件に「暴力団員でないこと」等を加えるなどして暴力団員の入居防止を図る、区営住宅の一部に定期利用制度を導入する、豊島区営ライブピア池袋本町及び豊島区営池袋本町第二つつじ苑を新設し、これらを条例に加えるほか、規定の整備を図るため提案されたものです。
 
 わが党は、区営住宅に暴力団員を入居させないことに反対するものではありません。また区営住宅・福祉住宅の新設は大いに賛成です。しかし、区営住宅に定期利用制度を導入することは見過ごすことのできない重大な問題であり、この条例案には反対するものです。
 
 区が導入しようとしている定期利用制度は、対象を区営住宅に入居申請できる要件を備えた40歳未満で子どもを含めた3人以上のファミリー世帯とし、入居承認期間は10年以内、利用期間内は収入超過等での明け渡し請求の対象にならない、利用承認期間が満了となった場合は更新しない、などというもので、新設される区営住宅、豊島区営ライブピア池袋本町に2戸定めるとしています
 
 以下反対の理由を3点述べます。
 反対する第1の理由は、そもそも公営住宅である区営住宅に定期借家制度はなじまないということです。
 2000年2月、当時の自公政権は公営住宅と定期借家制度に関して、政府見解をだしています。これによると「公営住宅は住宅に困窮する低所得者のために賃貸する住宅であり、入居者が・・特段の事由がない限り居住が継続することを前提に制度が成り立っていることから、事業主体は、入居者との間で期間の定めがない賃貸借契約を締結しており、定期借家制度になじまない」と述べているのです。低所得者を対象としている区営住宅に、定期利用制度を導入することはまちがっているということです。実際に、現在導入している自治体は東京都と練馬区だけだということをみても明らかです
 
 反対の第2の理由は、今回の区営住宅の定期利用は低所得の子育てファミリー層の支援にならないからです。
 この制度が利用できるのは公営住宅の対象となる収入分位、すなわち月額所得が15万8000円までの世帯です。区は「低所得のファミリー層が入居後、10年間で自立計画を立てる」ための支援策だと説明しました。しかし10年後収入状況が悪く、自立できないときはどうなるのでしょうか。区は「10年という定期利用だから退去していただく」「しかし別のことを考えなければならないとは思う」「対策はこれから検討する」と答弁しました。子育て世代では10年なんてあっという間です。さきほども述べたように入居の申し込みができる世帯は収入が低い世帯です。その世帯が10年後転居できる保証はどこにもありません。とくに今のような経済動向ではなおさらです。部長は「住宅対策への新たなチャレンジ。今後随時考えて行きたい」と言いました。
 2003年「公営住宅管理に関する研究会」の報告では、「定期借家制度は公営住宅法の趣旨に反しているものではない」としてはいますが、それでも、「地域事情の特殊性、施策対象の限定化、退去時の居住の安定確保等、一定の条件を具備することを前提にすれば」と条件を示しています。住宅政策の第一は住み続けられる、安定した住宅を提供することです。それを10年という期限を定め追いだすことは問題です。さらに退去できなかった場合の施策は、「これから検討する」などとは無責任の極みです。
 
 反対の第三の理由は、定期利用制度は豊島区の住宅政策の貧困さをごまかす隠れ蓑だということです。   
 区は条例の提案説明で「区営住宅退去者の平均入居期間は19年間、最長で54年間、最短で3年間となっている」「公営住宅入居者と入居希望者との受益の負担の公平性を確保、特にファミリー層がなかなか入居できないため入居の機会の拡大を図るため」「若年層は施策が少ない」と言いました。「なかなか入れない」最大の原因は、区営住宅や福祉住宅があまりにも少ないことです。この間、都は入居要件をどんどん厳しくし、区も同様に対象者を狭めてきました。しかしそれでも足りないのです。
 また、今年3月に発表された区の住宅マスタープランのファミリー世帯への家賃助成はほとんど進んでいません。区民住宅は低所得の世帯では家賃が高すぎ入居できません。 
 要は所得の低い子育て世代が安心して入居できる住宅が足りない、またそれを補完する制度も未整備、とりあえず定期利用制度を導入し、10年ずつ住宅を使い回しましょうということにほかなりません。
 豊島区は家賃が高く、高齢者や子育て世代にとって住宅問題は深刻です。住み続けられる住まいがなければ子育てはできません。本当に子育てしにくい地域です。
 さらに東京都はこの10年間、都営住宅の新規建設は一棟もありません。都がやらないからこそ、豊島区にとって区営住宅の大量建設は待ったなしの課題なのです。
 それをせずに区営住宅に定期利用制度を導入するのはあまりにも姑息なやり方と言わざるを得ません。

 以上のことから、私は、都市整備委員会の審議のなかで定期利用に関する条文を削除する修正案を提案しました。
 しかし他の委員の方々は「公営住宅が少ない」「入りたい人がたくさんいるから」「相談が多い」と住宅問題の深刻さを発言しながら、「門戸を開くことは良い」等として修正案を否決し、条例案を可決しました。
 「入りたい人がたくさんいる」ということは、まさに区営住宅が足りないということで、区の住宅政策自体が区民の実態に合っていないということではありませんか。

 以上、第63号議案「豊島区営住宅条例の一部を改正する条例」の可決に反対することを改めて表明し討論を終わります。