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区議会質問
 
2011年度決算に対する反対討論(小林ひろみ)

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、2011年度一般会計決算並びに国民健康保険事業会計決算、後期高齢者医療事業会計決算、介護保険事業会計決算の認定に反対の立場から意見を述べます。
 討論に先立ち、決算委員会審議のための資料要求に時間を割いて準備をしていただきまして、心から感謝を申し上げます。今後の貴重な資料とさせていただきます。理事者の皆さんからも職員の方々によろしくお伝えくださいますようお願いします。
 
 この年度の直前、3月11日に東日本大震災が発生、地震と津波で多くの方がなくなられ、また家や財産を失いました。福島第一原発事故はレベル7という過去最大級の事故となりました。あれから1年7カ月、被災地の復興・復旧は進んでいません。
 民主党政権はこの年11月自民党、公明党の協力を得て、復興増税法を成立させました。今、被災地では多くの自治体庁舎改修が手つかずなのに、東京・霞が関の中央官庁建物の「耐震化改修」に億単位の予算をつける、外国人観光客向けの標識を全国各地に設置する、北海道や長野県の自衛隊駐屯地の浴場などの建て替え費を盛り込むなどの「流用」が大問題になっています。
 福島第一原発の事故は「収束」するどころか、その被害は拡大し、いまだ避難者16万、農業、漁業、林業や観光業をはじめ、あらゆる産業、経済への深刻な打撃も続いています。
原発に対し国民の厳しい目が注がれ、「原発即時ゼロ」を求める声が広がっています。
 今年8月に民主・自民・公明の3党は消費税増税関連法を強行可決しました。「消費税が上がったら商売続けられない』『生活ができない』「被災地まで苦しめるのか」との声があがっており、国民の多数が消費税増税に反対という状況は、増税法案強行後も揺るぎがありません。
 今、社会保障制度は、民自公3党が強行した社会保障制度改革推進法に見られるように、予算削減のための制度改悪から、国民の権利としての社会保障の否定へと、改悪の質が加速されようとしています。生活保護バッシングと切り捨てはその典型であります。
 雇用破壊の面でも、賃金の下落が続き、若者の就職難は引き続き深刻です。わが党は今年2月に「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表しました。「経済提言」が提案している二つの転換――消費税頼みから、「応能負担」の原則への抜本的転換、大企業応援の「成長戦略」から「国民の所得を増やす経済改革」への抜本的転換、これを実行すれば、人間らしい生活と雇用が保障されるとともに、消費税に頼らずに、社会保障充実と財政危機を打開していくことができるのであります。
 
 東京都は、石原都知事のもと、福祉を削り、医療費無料化には消極的、都営住宅の新規建設はしない、放射能対策、耐震補強補助の充実にもなかなか取り組もうとしてきませんでした。今年、4月に東京都が公表した「首都直下地震等による東京の被害想定」は最大震度7、死者9700人、木造密集地域に被害集中などというものですが、策定過程と使用されたデータが十分に明らかにされていないため、被害想定の是非を検証できないなどの欠陥があります。それでも東京都は、これをてこに、木密地域不燃化10年プロジェクトで都市計画道路事業を強行しようとしています。外環道や築地市場の豊洲への移転も含め、オリンピックと防災を口実に大型開発や道路建設を進めようとしているのです。
 
 豊島区はどうでしょうか。
 民主党政権は自公政権に引き続き、「地域主権主義」をより一層進め、地方自治体に仕事を押し付け、自治体本来の住民福祉の機関という役割を大きく変質させ、さらに都市間競争を看板にした大企業による大型開発を推進しています。
 区長はこれらの流れにそって、区民に「財政難」「景気に左右されない強固な財政基盤を作る」「身の丈をふまえた健全な財政運営を」として、リストラ、合理化、住民犠牲の行革を実施し、区民サービスを大幅に削減してきました。
 こうして区民に対してはやるべきことはやらず犠牲を強いて、反対に基金をため込み、3年で125億円という行き過ぎた借金返済を最優先にしてきました。そして「財政を立て直してきた」といつてきたのであります。
 ところが、12年度予算編成にあたっては、56億円の財源不足となり、その歳出対策として13億円の歳出抑制の精査を行い、さらに義務教育施設整備基金の積み立ても6億円減らし、また歳入確保では財調基金約19億円を取り崩す予算となりました。区長の言う「強固な財政基盤を作る」「景気に左右されない財政運営」は達成できなかったということです。区長が進めてきた財政運営は間違っていたということです。さらに区は、今後は、「聖域なく歳入・歳出を精査し見直していく」とし、使用料や手数料など「受益者負担」と称して、引き上げを検討することを明らかにしたのであります。結局、また区民に犠牲を押し付けようとしているのであります。
 
 今回、日本共産党区議団は、
第1に深刻な状況になっている区民生活を支え、命を守るものになっていたかどうか、
第2に無駄遣いはなかったか、不要な開発に固執し大型開発優先で区民の暮らしにしわよせしなかったかどうか、
第3に財政運営や区政の方向が区民の願うものになっていたかどうか、
の観点で審査をしてまいりました。
 
 まず、第一の観点、深刻な状況になっている区民生活を支え、命を守るものになっていたかどうかについて、です。
 
 第一に防災についてです。
 東日本大震災の経験から、区民の生命、財産を守るための防災対策の強化は最優先課題であります。
 この年度当初予算では、防災予算は16億7000万円でしたが、補正予算で10億8000万円積み増しし、予算現額は27億6000万円余、決算額は23億9000万円余となっています。震災後の補正予算の中で最大のものは、池袋本町電車の見える公園の土地購入費用、6億5000万円です。この公園は、2011年に開設予定だったものが「鉛がでて処理が必要」などの事情で遅れていたもの、震災があったからといってすすめられたものではありません。
 直接区民に対して行った施策は、減災対策器具設置事業と耐震診断や補強の補助です。
 まず、減災対策器具設置事業です。この年補整予算で500万円計上し、執行率99%と大変高くなっています。それなのに、今年度予算ではわずか100万円しか計上せず、前年度の待機者分で使い切ってしまい今年6月に急きょ補正予算で160万円増額しました。予算が足りなかったのです。
 また、木造住宅や非木造住宅などの耐震診断助成の執行率は8.5%、耐震改修助成の執行率は11.7%と低すぎます。耐震補強については、前年度0件から、木造6件シェルター1件と増えたのですが、震災前の目標年15件と比べて足りません。補助率が上がったとはいえ、耐震補強工事はお金がかかります。耐震補強のついでに段差を解消するとか、簡単なリフォームもしたい、結局総額が大きくなるのです。高齢者の中には「そんなお金はないから工事はしない」とあきらめてしまう方もいます。補助額の増額が必要です。
 
 第二に保育園について述べます。
 待機児童についてです。
 わが党は、保育園の待機児解消のためには、認可保育園の増設をすべきだと求めてきましたが、区は「保育計画を確実に進める」として、認可保育園はこれから1か所作るだけで、後は認可保育園の改修により定員をふやすことと、認証保育所や保育ママをすすめてきました。今年4月1日の待機児は、旧定義で291名であり、昨年と同様です。新定義では129名になりました。このことについて区は、保育計画の効果が上がっているといいますが、実際には待機児童の状況は深刻なのです。
 最近の経済、社会状況を反映し、生活保護世帯の認可保育園の入所や待機児が増えています。さらには、4月1日現在で点数が20点満点でも認可保育園にはいれない人は昨年よりも増えています。資料によれば、昨年4月は52名、今年4月は85名になり、特に今年の四月は新定義でも20点以上で待機児になっている人は、28名にもなっているのです。この子たちは結局母親が自宅でみたり、無認可に預けたりしています。
 理事者は「乳幼児人口は増えているが、保育需要は少しずつ減っている」という認識です。これが間違っているのです。そもそも4月は一番保育園に入りやすい時であり、その時入れなければ、途中で希望しても入れないのが実情ではありませんか。実際9月現在の待機児は154名にもなっているのです。認可保育園の増設をしない姿勢は認められません。
 
 認証保育所保育料の補助制度についてです。認可保育園に入れずやむなく高い保育料を払って認証保育所に入所させている保護者の負担を軽減するため、わが党は補助制度の創設をもとめてきました。わが党の議案提案をきっかけに、11年度からようやく認証保育所保育料補助が始まりましたが、補助額が少ないのでわが党は認可保育園との保育料の差額全額を補助するよう求めてまいりました。区は差額補助に後ろ向きで、その理由は「認証保育所の利用者が増え、補助金の目的は達成されたから」というのですが、とんでもありません。この制度の目的は、要綱では「認証保育所の利用に係る保育料の一部を補助することにより、児童の保護者の経済的負担を軽減することを目的とする」となっており、子ども文教委員会でもそう説明されてきました。低所得者ほど負担が重くなる認証保育所の負担軽減はまだ、不十分です。制度の目的を都合よくすり替え、補助を増額しない姿勢は認められません。
 
 第三に高齢者についてです。
 まず特別養護老人ホームについてです。
 特養ホームの待機者は今年6月末現在1249名で、うちAランクは447名もいます。現在の具体的な計画は千川小学校跡地並びに旧中央図書館跡地で計160名で、ほかには計画はありません。実際入所できるのは2年以上も先です。具体的に精神障害者の息子さんが要介護3の父親を介護している事例をあげましたが、点数は8点にしかならないで、緊急度が高いAランクにはならないのです。Aランクの人はもっと大変な事情をかかえ、入所が必要です。理事者は、明日にでも入りたい人に対する施策は、24時間対応でとか、グループホームでやっていきたい、と言いますが、これでは対応できないから申し込んでいるのです。ショートステイのことを考えれば、やっぱり特養は必要です。急いで特養ホーム増設をすべきと質問すると副区長は「考えていないわけではないが、報告できる状況になっていない」と答弁。区民の深刻な状況に応えていません。
 
 次に高齢者の見守りについてです。
 一人暮らし高齢者等アウトリーチ事業の対象者は、あと3500名もいます。区が責任を持って、地域包括支援センターの体制をさらに強化して、早急に完了すべきです。
 また、これまで豊島区がすすめてきた「見守りと支えあいネットワーク事業」では、見守りしてほしいという登録者も見守る協力員も年々減っています。
 今議会に提案された補正予算に盛り込まれた、「見守り訪問事業」は、高齢者のみ世帯に限らず、子どもなど同居者がいる世帯や本人が「見守り」を拒否している場合も対象にし、シルバー人材センターへ委託するとしています。この事業は、行政情報公開・個人情報保護審議会で諮問され、取り扱う個人情報の内容や民生委員など他の事業との関係、委託のことなどから一度は「否決」されました。再度16日に審議会が開催され、取り扱う個人情報の範囲を変更し、また民生委員との協議もしたとして、審議され、私は反対しましたが、「是認」されたものです。理事者は「見守りの手段を増やす。自分では見守りが必要と思っていない人を定期的に訪問して、孤独死をなくしたい」とのことでした。高松での孤立死の事例を見ても。自分で見守りが必要と思っていない人、見守りを拒否する人に対応するためには、専門的にまた継続的に関わっていく必要があります。安易に委託をすべきではありません。
 
 見守り手段の一つ緊急通報システムについてです。
  この年は利用できる要件を緩和するとともに、自己負担を本人の状態や所得に応じて「無料、1割、5割」とする制度に変更されました。新規設置件数は増えていますが、当初予算と比べて執行率は58%と低くなっています。慢性疾患がある人は無料又は1割負担ですが、慢性疾患がない「元気な」お年寄りは月々2300円払わなければなりません。費用負担があるから、利用が増えないのではとの問いに、理事者は「辞退の理由は金額が高いという人は少なくて、多くは『まだ元気だから』というもの」と答弁していました。なぜ、「元気」と言って我慢するのか、ぜひ考えていただきたいものです。利用料は高齢者に負担をかけるものであり、認められません。
 
 第四に生活保護や低所得者についてです。
 法外援護では、行革で削った風呂券を戻さないだけでなく、障害者へのタクシー券も削ったままです。どちらも保護費の中に含まれているからその中でやるべきという考え方です。しかし、生活保護の基準は低くぎりぎりの生活しかできない金額です。本当に冷たい態度です。
 今、マスコミでは生活保護の不正受給問題ばかりがとりあげられています。生活保護については、この間、国と自治体が、密室で制度見直しを議論してきました。中では、医療費の適正化といって、窓口自己負担の導入を検討したり、稼働年齢層への有期制の導入を検討したりしています。
 区は「区財政の推移と現状」において区財政の課題として「急増する扶助費」をあげています。わが党は、区長に対し、必要な財源を国に要求すべきと求めてきました。そしてわが党の指摘をうけて、ようやく今年の23区の特別区長会では国に対する要望書に、全額補助を求める内容が盛り込まれました。ところが、それだけでなく生活保護制度上の課題として、「有期保護制度の創設」や「医療扶助の適正化のさらなる取り組み」などが入っていたのであります。こんなことをしたら、ますます生活保護はうけにくくなるし、もともと病気で働けなくて生活保護になっている人たちは、医者にかかれなくなってしまいます。この動きはまさに、国の動き、民自公3党が強行した社会保障制度改革推進法の流れと同じです。
 生活保護は最後のセーフティネットです。日本の捕捉率の低さからいえば、生活保護をうけられるのに受けていない漏給こそ、取り上げられるべき問題です。豊島区は、11年度に「豊島区における生活保護行政の現状と方向性について」を発表しましたが、分析が不十分です。
 
 女性自立援助資金貸付事業についてです。
 2012年度の「豊島区行政評価」において、女性自立援助資金貸付事業は、「代替支援が可能」「全廃した区もある状況を鑑み、廃止も視野にいれた検討を早急に進める」となっています。この事業は、「配偶者のいない女性または女性が扶養している子が経済的に自立して社会的に安定した生活を営むために必要な資金を貸付する制度」です。これを廃止すれば、また一つ生活保護にならずに済むための区独自の施策が無くなることになります。本当に区民が困ったときに生活を支える施策が無くなってしまうのです。
 
 第五に住宅リフォーム助成制度についてです。
 かねてより、わが党は区内建設業者の仕事をふやすためにも住宅リフォーム助成制度を実施するようもとめてまいりました。区は、11年度予算を審議したときは、夏ごろにはきめる、とかいっていたのが、いつのまにかまた「重点プロジェクト推進事業の中で検討していく」等として、先延ばしにしてきたのです。この年、耐震補強工事では、区内業者に依頼をすると補助率を6分の1上乗せする制度を実施しました。建築指導課長は、「効果があった」と答弁しました。資料をいただきましたが、木造耐震補強補助は11年度分6件すべてが区内業者、今年もすでに実施済みの19件のうち12件を区内業者が工事しています。効果があるとはっきりしました。住宅課長は、「やる」とはいいませんでしだか、本来なら実施すべきだったのです。

第六に図書館について述べます。
 豊島区は2003年に図書館六館構想を発表、新中央図書館の開設にあわせて、雑司が谷図書館を廃止してしまいました。また、六館構想では、巣鴨体育館の土地を使って巣鴨図書館を拡張し、駒込図書館を廃止することになっています。文化、文化といいながら図書館を減らすのは間違っています。今回巣鴨体育館と巣鴨図書館の大規模改修が計画され、事実上駒込図書館を存続することになりました。ところが、区は「六館構想を撤回する」とは言いません。また、地域の強い要望によって千登世橋地域文化創造館には図書貸し出しコーナーが作られ、利用者が年々増えています。手狭で、読書スペースもない状況を改善すべきと質しましたが、区はやろうとしません。廃止した雑司が谷図書館の場所は、8月まで東京芸術文化会館の建て替えのために事務室として使っていましたが、現在は空いています。副区長は、「会議室や区民貸し出しをする」といいました。民間に貸して賃料を取るよりはましですが、貸し出しコーナー拡張にこそ使うべきです。
第七に就学援助についてです。
深刻な経済状況を反映して、豊島区の就学援助を受ける子どもは増えています。また、小中学校の私費負担も少しずつ高くなっています。中学校入学時の標準服やかばん、上履きなどの購入費もとても高いです。「夫には1万円のスーツなのに、息子は3万円の標準服」こんな声が聞こえてきます。ところが、入学支度金は26120円しかでません。
こんな状況なのに、就学援助の単価は四年間も据え置き、増やしていません。また申請は4月で、入金されるのは8月、という状況も変わりません。改善を求めましたが、一切拒否です。

第八に学校改修についてです。
学校のトイレ改修は、いくつもの小学校からでている要求です。仰高小学校は子どもの数が増えトイレの数が足りないといっているのです。トイレ改修には1系統4500万円ほどかかるとして、金がないのですすまない、ようやく各学校1系統は改修することにし、10年計画でやっているとのことですが、遅すぎます。小学校は6年間しかないのです。せめて5年で改修すべきです。
西池中学校の新校舎が完成し今年8月に落成式をしました。現在の小中学校改築計画では、前期2017年度までの改築で名前があがっているのが7校、残りは中期2027年度までに10校、後期2037年度までに11校という予定でした。11年度に「中期詳細計画」の検討を行い、今年度中に発表することになっていましたが、「金がないため」、計画がつくれず公表できないことが分かりました。中学校では改築していない、改築計画がないのは、千川中、西巣鴨中、駒込中の3校だけです。隣接校選択制のもと、改築計画を立てずに施設の格差が広がれば、さらに小規模校化する学校がでてくることが心配されます。教育条件整備は区、行政当局の責任です。公立校の間で施設に格差があってはならないはずです。

 第一の観点の最後に中小企業支援についてです。
 この間、区長は「来街者が来ることがポリシー」「魅力あるまちが新たなエネルギーを生み出す」などとして「池袋の活性化」「大型開発」をすすめてきましたが、豊島区内の中小企業の状況はいったいどうなっているでしょうか。今年も景気がますますわるくなっており、区内の企業倒産件数は昨年の1.5倍のペースで増えています。先日日銀の景況も下方修正され、今後の悪化が予想されます。地域の商店街では、一つまた一つ、そば屋や肉屋、酒屋が店を閉め、老舗のスーパーも次々閉店しています。ある商店主は「みんな仕事帰りに池袋のデパ地下で買い物してしまい、地元の商店ではかわない」と嘆いていました。区内の公衆浴場も32からまた一つ減ってしまいそうです。一体どうするのか、と問うと区長は「大店法もない」「永年やってきた地元のスーパーもなくなった」「ゆず湯などの支援もしたが、また風呂屋もなくなる」「一体どうしたらよいか」と、お手上げの答弁。全く無責任です。
第2の観点、無駄遣いはなかったか、不要な開発に固執し、大型開発優先で区民の暮らしにしわよせしなかったか、についてです。

 新庁舎関連では、南池袋二丁目A地区市街地再開発事業9億6500万円、新庁舎整備の推進1300万円、現庁舎周辺地区まちづくり推進事業500万円余があります。「金がかからないやり方」と言いますが、かかっているのです。
 また、池袋東側の開発についていえば、副都心ガイドプラン推進事業(造幣局)、池袋駅及び駅周辺整備事業(東西デッキ・サインの事業化)、新たな公共交通システムによる交通戦略調査経費(LRT)、など将来巨額の税金をつぎ込む事業が並んでいます。
 池袋地下通路のサインの改善については、安全の面からもバリアフリーの面からも進めるべきですが、なかなか進みません。これまで、サインは早くできる、2012年にもできるといわれてきたのに、なぜすすまないのか。理事者は、関係事業者との調整が大変で進まず、震災があって、緊急の部分だけ実施したといいます。サイン一つでも、事業者の合意が難しいのに、東西デッキなどいつできるか分かりません。分からないものにお金をつぎ込むのは、やめるべきです。
 LRTについても同様です。2011年度1400万円余かけて、調査・研究をしています。この間LRTにかけたお金は8000万円にも上っています。実際にやるとなれば70億円もかかるのです。
 区民が望んでいる区民サービスには取り組まないで、東西デッキやLRT、新庁舎など大型開発については、お金をかけてすすめるのは認められません。

 東池袋四・五丁目の街づくりについてです。
 この地域は2008年に地区計画を決定しました。建物の用途の制限や、容積率の緩和、最低限度の敷地面積を決めるなどのほか、建築物の高さを地区別に16メートル、19メートル、22メートル、25メートルとしました。問題は、一定の条件を満たし、区長が認めたものはこの高さの2倍まで可能としたことで、地区計画を定める条例にわが党は反対しました。今年になって、ここに高さ46.8Mのマンションが建つことがわかりました。木密地域の事業などでは、区は「共同化」「共同化」と言いますが、今回の建築物は住民による共同化ではなく、大手マンション業者が建設するもので、地権者24軒中マンションに入れるのは3軒のみ、あとは追い出されてしまうのです。住民追い出しの街づくりであり、認められません。
 また、近隣住民からは「11年度に区の補助をもらって太陽光パネルを付けたのに日陰になってしまう」との声が上がっています。「エコ」とか「環境都市」とかのスローガンを掲げていても、結局は環境を壊すまちづくりを推進しているのです。

 「豊島清掃工場排熱利用基礎調査」について述べます。今検討されている豊島清掃工場排熱利用の最大の課題は、JRや東武の線路を横断しなければならないことです。理事者は「現時点で不可能ではない」と言いますが、JRに利益があるわけではありません。11年度予算で措置された池袋東口駅前公園脇の駐輪場建設は、JRと随意契約をしたものですが、他の駐輪場に比べ自転車一台当たりの工事費が高すぎることなどから、契約案件にわが党は反対しました。今定例会には追加工事が必要だとして金額を上乗せする契約案件が出され、工事費はますます高くなってしまったのです。もしJRが了承し排熱利用が具体化したとしても、工事は鉄道会社しかできないのであり、また高い工事費を出すはめになります。
 調査には10年度200万円、11年度300万円を執行、今年度は577万円も計上され、累計では1000万円ものお金が使われます。こんな無駄遣いはやめるべきです。
 
 環境関連予算はのきなみ執行率が低くなっています。環境破壊する大型開発や高層ビル建築を区が率先してすすめながら、いくら「環境」「エコ」の施策をならべても、実効が上がらないのは当然なのです。
 
 空き家対策についてです。
 「住宅マスタープランの重点プロジェクト推進事業」としてこの年区が一生懸命にやったのが、空き家対策です。この事業は「区内で2万戸を超える空き家・空き室の有効活用を目的として、所有者と住宅を求めているNPOなどの事業者をマッチングさせ、空き家・空き室の解消を行う仕組みづくりや、その運営を行う担い手を育成していく」とのことでした。600万円かけて抽出調査を行いましたが、その中で今年度利用できる空き家は1戸もないことが明らかになりました。空き家調査は無駄遣いです。
 豊島区内に2万戸もあるという空き家ですが、もともと民間のものであり、簡単にマッチングなどできません。また委員会で儀武議員が指摘したように、調査の対象にはなっていないのですが駒込の都の住宅供給公社が建てた住宅は、建替えて6年目ですが、半分近くが空き家になっています。建替える前の家賃は3万円、建替えたら7万円に上がり傾斜家賃でさらにあがって高い家賃に出て行く人が増え、一方、新規にはいるには、近傍同種の家賃ということで14万円にもなっていて高くて入れないのです。
 わが党に寄せられる住宅の相談は、「安くて良質な住宅に入りたい」「都営住宅、区営住宅、高齢者住宅に入りたい」というのが一番多いのです。石原都政は都営住宅の新規建設をしていません。豊島区も区営住宅を建てるなど区民の切実な要望に応えようとしていません。
 
 第3の観点、財政運営や区政の方向が区民の願うものになっていたかどうか、についてです。
第一に西部地域複合施設についてです。
今年2月に住民説明会が開かれました。様々な要望・意見が出ました。ところが、豊島区は、その意見に耳をかさず、区の方針でしゃにむにすすめようとしています。委員会審議ではあらためて問題点を明らかにしました。巨額の一般財源をつかい起債を弥子してまでもやることは大きな問題です。
 一つは資金計画についてです。総額約44億5000万円必要で、そのうち国庫補助金は5億円です。残りは区有地の売却7億2000万円、基金から7億5000万円、起債22億4000万円、一般財源2億4千万円となっています。
 区長は、「地元から強い要望がある」と答えました。しかし、わが党には、「お金がないといっているのに、新しいハコモノを今作らなくてもいいではないか」「今の図書館など少し手を入れてもらえば十分使える」という声が寄せられているのです。
もう一つの大きな問題は、施設の考え方です。区は、7つの施設を統合し複合施設をつくるとしています。コンセプトの第一は、「西部地域に関する行政機能・地域コミュニティ拠点の確立」としていました。ところが、長崎健康相談所が「健康相談機能」となるなど行政サービスが小さくなっています。そして、大きくなったのが、(仮称)芸術文化資料館の部分です。しかしこれも3つの分野があります。詰め込みすぎです。
建物のデザインなど問題はいくつもありますが、大型バスの駐車場についてとりあげました。
住民説明会でも、大型バスの駐車場はいらないという声が出ていました。委員会で理事者は「教育委員会から子どもの見学のために大型バスを使うと要請があった」と答弁しました。しかし現在ほかの見学では大型バスは使わず、公共交通機関を使っています。公共交通機関を利用するのも子どもにとっては社会見学です。また、区民からはコミュニティバスを走らせてほしいと声がありますが、区は「豊島区は交通便利な地域」などといい、真剣にやろうとしません。結局、遠くから人を集めるためのものということがはっきりしました。この施設は区民のための施設ではなく、他から人を集めるための施設だということが明らかになりました。

 第二に「新定員管理計画」についてです。
 豊島区では05年から始まった「定員管理計画」で、600名の職員をへらし2000名にするといって、職員削減をすすめました。その後11年度からは「新定員管理計画」のもと、さらに200名の職員をへらすとしています。毎年職員の平均残業時間が増えていることは理事者の答弁で明らかです。安全衛生委員会の資料では職場によっては大変な量の残業がされています。夜間いつも電気がついている職場もあります。
 儀武議員がとりあげたように、功労者表彰漏れやひとり親家庭等医療費助成現況届 15件の誤発送、 介護保険料納付書の二重発送などのミスも人減らしが原因ではないか、と尋ねました。理事者は、職員のひきつぎがうまくいかなかった、担当替えがあって漏れてしまった、チェックする機会もあったがそれも漏れてしまったとし、再発防止については副区長は「改めてダブルチェック、クロスチェックなどしていく」などと答え、人員削減が問題であるとは認めませんでした。
 非常勤職員や臨時職員は大変増えています。本来正規職員でやるべきものを、どんどん減らし、足りないから非常勤などで補うやり方は間違っています。公務労働は、経験をつんで、引き継いでいくものです。また、最近は法改正なども多く、制度が大変複雑化しています。生活保護を具体例としてあげましたが、忙しければミスもおきやすいし、区民への対応も十分できなくなります。結局区民サービスの低下になるのです。区長は「新定員管理計画」をあくまでもすすめる姿勢です。

 以上、第1に深刻な状況になっている区民生活を支え、命を守るものになっていない、第2に無駄遣いや不要な開発に固執し大型開発優先で区民の暮らしにしわよせしている、第3に財政運営や区政の方向が区民の願うものになっていない、ことから、一般会計決算認定に反対します。

つぎに3特別会計についてのべます。
最初は、国民健康保険事業会計についてです。11年度は、国の広域化方針に忠実に従い、23区が長年行ってきた保険料の賦課方式「住民税をもとに計算する」方式を「所得額をもとに計算する」方式(旧但し書き方式)にかえました。
その結果、わが党が指摘したとおり、保険料が上がり、とくに低所得世帯や障がい者世帯、多人数世帯など大幅に負担が増えました。深刻な不況のもと、収入が減るなか、国保料をはじめ年金保険料や税の負担など払うべきものの負担が大きく重くなっています。
賦課方式の変更によって、保険料があまりにも高くなりすぎるということで、23区区長会は、11年度と12年度の2か年に限り「経過措置」として減額措置を行いました。しかし、子育て世帯は、今年度から年少扶養控除が廃止されたため「経過措置」が適用されなくなるなど、負担増は、さらに深刻な事態をまねいています。13年度以降の「経過措置」の継続を強く求めるものです。
この年の9月は、被保険者証の更新の年でした。高くなった保険料は、未納者が増え11年度末の3月31日には、短期証の数が6990世帯、資格証明書が3381世帯にも上っています。
「豊島の国保」の11年度実績をみると、収納率は80%をきり、滞納処分による差し押さえ件数も400件を超えています。命を救う制度が低所得の区民のくらしをくるしめているのです。
もともと国民健康保険制度は、高齢者、自営業者など経済基盤の弱い国民のために始まった制度です。国の負担金は、11年度区の歳入構成で26、40%です。26年前は45%国が負担金を出していたのにどんどん削ってきた結果、払いきれないほどの高い保険料になってしまったのです。また、2000年には都がそれまで、調整条例によって補助を出していましたがこれも廃止。さらに、医療費がかかればかかるほど保険料にはね返る医療費対応方式の導入によって毎年のように保険料が上がるようになってしまったのです。
区長は、これ以上、区民に負担が重くならないように、安心して医療を受けられるようにあらゆる手立てを尽くすべきです。

次は後期高齢者医療事業会計についてです。
この年は、後期高齢者医療保険料の大幅値上げを決めた年です。平均保険料は、年額で84,527円から93,258円へ、8,731円(10.3%)の値上げになりました。年金は下がる一方なのに、なぜ保険料の値上げか、区民から怒りの声が寄せられます。年収約210万円の一人暮らしAさんは、後期高齢者保険料、57,600円、介護保険料67,200円、区民税・都民税36,000円、年額合計で160,800円の負担です。月々に、約17万円の厚生年金から家賃の85,000円を引くと、保険料、税金、水光熱費、電話代などを払うと、食べていけない。昨年は3か月入院したこともあって、わずかばかりの蓄えを取り崩し、何とかしのいだが、保険料や医療費の負担が軽くならないと、将来が不安だと訴えていました。今年の滞納者は、1306人。課長は「年度末には、例年、滞納者はほとんど解決する」と答弁しましたが、今年度、10.3%の大幅値上げを行えば、払いたくても払えない高齢者がさらに増えることは間違いありません。年金を毎月17万円をもらっている方でも、こんな厳しい状況です。国民年金の方は、もっと深刻な実態であることは、推して知るべしです。区は高齢者の実態をつかんでないと言わざるを得ません。国保課もそうですが、苦情のカウントをしていません。国保では、ある区では苦情の内容別にカウントしているそうです。苦情のカウントもしないというのは、区民の声に耳をふさぐということです。
2011年度、区は保険料滞納者に24件の短期証を発行、差し押さえを9世帯に行っています。高齢者の命と健康にかかわる重要な問題であり、老人保健法でも、短期証の発行や差し押さえはやっていませんでした。憲法25条の生存権を保障する立場から、直ちにやめるべきです。

最後に介護保険事業会計についてです。
この年は、介護保険料の大幅値上げを決めた年でもあります。保険料は、基準額で年額46,403円から62,280円へ15,877円の値上げ、保険料所得段階は、現行の11から12に見直したが12の所得段階すべて大幅値上げとなりました。
 今年、豊島区に寄せられた苦情・問い合わせは、来庁舎は200人電話が500本あわせて700件余、課長は「予想されたので特別体制をとって対応した」とのことです。いくら丁寧な説明をうけても、高すぎるという不満の声は解消できません。また、いやおうなく年金から天引きされてしまう制度では、「納得しないから払わない」こともできません。なくなく実質年金引き下げを我慢しているのが、今の高齢者の状況なのです。
 また、介護従事者処遇改善給付金がなくなったり介護報酬の改正が行われたため、同じサービスをつかっても利用料が上がった世帯があります。ケアマネージャーは、利用者に説明をしていても高齢者の中には理解ができずに、納得せず払わない事例をあげました。結局その分をケアマネージャーがかぶって解決せざるをえなかったのです。
 課長は、様々な問題がでているが、東京都がまとめて、次の改正に反映させるとしていると言っていましたが、2年先に反映させるのでは遅すぎます。困っているのは今なのです。
 以上、3特別会計の決算認定に反対することを述べ、討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。