HOME >区議会質問>本会議討論
区議会報告議員紹介政索と見解お知らせリンクご意見ホーム
区議会質問
西部地域複合施設 債務負担行為の変更に反対討論(小林ひろみ)
2013/10/1

 私は、日本共産党豊島区議団を代表してただいま議題とされました第51号議案 一般会計補正予算(第3号)の可決に反対の立場から討論します。

 本議案は、債務負担行為の補正として、(仮称)西部地域複合施設建築事業経費の限度額を32億4522万6000円から約16億円増やし、48億9300万円へと引き上げるものです。
 8月29日に行われた入札で応募した3つの共同事業体が入札前に辞退し、入札不調になりました。区長は、この事業をなんとしても進めるため、債務負担行為の限度額を引き上げ再入札する、として、本議案を今議会に提案し、また、国庫補助金をもらうためには、最終日をまたずに議会の議決を経て入札の手続きにはいりたいと、急いで議決を求めてきたので、本日の中間本会議が開かれたのであります。

 当初この事業は事業費総額44億5000万円、それを社会資本整備総合交付金つまり国庫補助5億円や起債22億4000万円をはじめ、千早図書館などの売却、基金や一般財源でまかなうとされてきました。このような大きな建設事業が入札不調となるのは前代未聞のことです。さらに総額44億5000万円かかるといわれていたものが、限度額とは言え、16億円も増え60億円以上かかることになるのですから、これは異常な事態です。

 第一の問題としてなぜ落札されなかったのか、なぜ16億円もの限度額にするのか、であります。
  質疑の中では、入札価格の積算についても設計会社に委託していることがわかりました。
  理事者は、設計会社は、最初は、当初どおりの見積もりでおさめた、と答弁しましたが、結局それでは実際には応札するところがなかったのです。もともと外壁が曲線の建物で、「建設費が高くなるのではないか」と疑問の声が出されてきました。それを区はこれまで「建設費は37億円でおさめる」と答弁してきたのです。
 直接工事費のうち積算標準単価によるものが4割、メーカー見積もりによるものが6割、そして今回大幅に上がっているのはメーカー見積もりのものだといいます。複数の業者から見積もりをとるので競争が働くといいますが、それも絶対ではなく、談合が行われていないかも分からないのです。結局事業者のいいなりということです。

 また、理事者は債務負担行為の限度額を48億9300万円、1.5倍にした理由は他の自治体で1.4倍、1.5倍にしている、簡単なみつもりでもそれくらいでいけるから、ということでした。実際の入札価格はこれから積算していくとのこと。「最大限であって、ここまではいかない」「10億円はいくかと」などということですが、その保証はなく仮に10億円だとしても、区民にとっては莫大な金額であります。また、今回、区は震災復興やアベノミクスで公共工事が増える一方で、労務者、特に熟練工の確保が困難、資材が高騰している、とか、4月から労務費や材料費が急騰しているあおりをうけた、といいますが、こんな事態はこれまでなかったと答弁しています。だとすれば、なおさら、今後建設費その他の経費が増えない保障はないのであります。

 第二の問題は、当初予定の金額でできないのになぜこの事業を無理やりすすめるのか、ということです。
 私の質問に、理事者は延期をすれば国庫補助がもらえなくなる、区民事務所ができないと、新庁舎建設にあわせた業務拡大ができない、施設の耐震補強や補修など費用がかかる、改修の間閉館するので利用者が不便、さまざま検討してデメリットよりメリットが大きいとなったなどと答弁したのです。
 しかし、国庫補助についてはもともと5億円と試算したのが、実は防災備蓄倉庫が当初よりせまくなったため減額、仮に限度額一杯の工事費になればようやく5億円になるということです。16億円工事費が増えて、補助金としては当初どおりしか出ないということ、結局持ち出しばかり増えるということです。
 さらに、質疑の中で仮に延期したらどうなるかのやり取りがあり、わが党は資料を要求しました。その資料によれば、たとえば2020年(オリンピック)までこの計画を延期したとしてかかる費用は約5億9300万円、さらにこれまでにかかった設計費などが1億8600万円。両方たしても7億8000万円とのこと。16億円の負担増を考えれば、ここで一歩踏みとどまって冷静に検討すべきです。

 審議の中ではこの事業を延期するかすすめるかのメリット、デメリットとか、補助金がもらえるチャンスにかける、とかの発言がありましたが、これは間違いで、財政的な裏付けがきちんとあるかを見極めてから進めるのが、公共工事の本来のあり方です。
 これまで豊島区はお金がないといって区民要望や福祉施策を削り、各部各課には新規拡充事業をするなら今あるものを削れ、とまで言ってきたのです。しかしこの事業ではあっという間に16億円もふやすことを決断しすすめようとしています。わが党は、今後は保育園や特養、改築の必要な学校や修繕しなければならない施設や橋梁などがありその財政負担や区財政への影響も考え、過去に600億円の豪華庁舎公会堂建設計画を凍結した経験もあることをのべ、今こそ重大な決断をし、計画は延期し、検証してもいいのでは、と追及しました。
 これに対し理事者は、この施設は老朽化したものを複合化することで経費を削減したり、土地を売却するなど工夫しておりいくつもの施設が関連する、今の財政はスリム化した、税収増がみこまれ、16億円は区民にそれほど負担にならない、などと安易な答弁をしたのであります。
  しかし、理事者がいう他の施設の改築、改修計画や財政の見通しについては、これまでわが党は何度も要求してきましたが、未だ議会には示せていないのではありませんか。
 あらためて区長に決断を求めたところ、ストップや延期のことも財政のことも検討した、コミュニティや防災、文化など区民の活動拠点としてこの施設は作っていかねばならないと判断した、この決断は区民にご理解いただくのは難しいかもしれないが、いろいろ議論を精査したうえのこと、予想しない状況であり理解してもらいたい、などとしたのです。また、最後に区長は特別に発言を求め、「入札が不調となる可能性があり、その時には重大な決断をしなければならない」といったように、この決断に無理があることは明らかです。

 第三の問題は、この施設そのものに問題があるということです。
 区は、東側の新庁舎建設に対し、西側の施設建設としてこの(仮称)西部地域複合施設を位置付けてきました。
 わが党は、もともとこの計画については、資金計画で区有地を売却することになっていることには明確に反対しました。さらに西部区民事務所や地域文化創造館、図書館、西部保健福祉センター、区民ひろば、長崎健康相談所や、郷土資料館を移設するとして(仮)芸術文化資料館を一緒に建てることで各施設の機能や面積が縮小されたり、これまで身近にあった施設が無くなったりすること、さらには(仮)芸術文化資料館の部分ばかりが広くなっており大型バスがとまれる駐車場などみても区民のための施設ではなく他から人を呼び込むための施設になっているのではないか、卵型の設計で建設費や維持管理コストが高くなるのではないかなどを指摘してまいりました。住民からも、住民の声をきき建設計画を見直してほしいと陳情もだされましたが、区は「決まったこと」として、この計画をしゃにむにすすめてきたのであります。わが党はあらためて今年の予算委員会でも、この施設について、地域からは急いでやらなくていい、卵形のデザインは見直すべきと声が上がっている、優先すべき福祉関係の予算はお金がないと言って削っている中で、そんなに急いでやるべき施設ではない、としてきたのであります。
  以上三点にわたって指摘してきましたが、他党は、「これまで設計費などをかけたのが無駄になる」とか、「やむをえない」「やってみるしかない」「今回に限っては賛成」などといって無責任にも賛成したのであります。

 わが党はこれまで、投資的経費は一度始めたら後戻りできなくなることを指摘してきました。今回、入札が不調に終わったことを契機に、公共事業のあり方をはじめ、今後の財政計画、住民にとって本当に使い勝手の良い身近な施設のあり方など、総合的に検討するべきであり、この施設に16億円もの税金をさらに投入することは、認められません。

 よって、(仮称)西部地域複合施設の債務負担行為の限度額を引き上げ、建設をすすめようとする第51号議案一般会計補正予算(第3号)の可決に反対します。