私は日本共産党豊島区議団を代表し、ただいま議題とされております、2021年度予算すなわち、第15号議案 令和3年度豊島区一般会計予算、並びに第16号議案 令和3年度豊島区国民健康保険事業会計予算、第17号議案 令和3年度豊島区後期高齢者事業会計予算、第18号議案 令和3年度豊島区介護保険事業会計予算の三特別会計予算に可決に反対の立場から討論を行います。
さて菅政権として最初の当初予算案となる2021年度政府予算案の全体の歳出規模は、一般会計で120兆円に上ります。しかし、苦闘する医療現場への支えは全く足らず、国民の暮らしへの本格的支援にも背を向けました。軍事費は過去最大を更新する一方、コロナ対策の土台となる社会保障予算は、高齢化に伴う自然増さえ容赦なく削る冷たさを鮮明にしています。
また菅政権は首都圏4都県に出していた新型コロナ対策の緊急事態宣言を21日で解除しました。しかし感染者数は下げ止まり、東京都や関西などで増加、感染力が強いとされる変異株の流行も拡大しており、本来、宣言を解除できる状況ではありません。2カ月半の緊急事態宣言で感染を抑え込めなかったことは菅政権の対策の破綻を示しています。
3月12日にわが党が菅首相に行った、新型コロナ封じ込めの大規模検査を求めた緊急要請では、第1に高齢者施設、医療機関などへの社会的検査、とりわけ職員には頻回・定期的な検査(週1回程度)を行うこと、第2にモニタリング検査を「1日10万人」の桁で大規模に行うこと、第3に変異株のサーベイランス(調査・監視)を、陽性者の5~10%という政府方針から大幅に引き上げて実施することを提起、菅政権はこれまでの対応を反省し、感染再拡大を防ぐ抜本的な対策に踏み出すべきです。
では都政ではどうでしょうか。新型コロナウィルス感染症から都民の命と健康を守るうえで、都立病院と公社病院はコロナ専用病院確保の中心を担うなど、重要性が増しています。ところが、小池都知事は、すべての都立・公社病院を採算重視の経営形態となる地方独立行政法人に一括して担わせる独法化計画を、このコロナ禍でも強引に進めています。財政支出を減らすことが目的の独法化を中止し、都民の命と健康を守るために都が責任を持って抜本的に拡充・強化すべきです。
さて豊島区の2021年度予算は、一般会計は1,302億2700万円、前年度に比べ19億3400万円の増。1.5%のプラスになり、2019年に次ぐ過去2番目の予算規模です。特に投資的経費は、対前年度比7億9000万円の増、4.8%プラスの172億3000万円 となりました。新型コロナの拡大により、区の歳入環境は、急激に悪化し、特別区民税は17億円、特別区財政調整交付金は36億円、地方消費税交付金は13億円の減で、基幹歳入の減収規模は合計で66億円と想定しています。その財源不足を補うため財調基金69億円を取り崩しました。
区は、この予算を、1.大幅な歳入減の中でも、区民生活をしっかりと支える予算、2.感染症の拡大防止と社会経済活動の両立を図った予算、3.SDGs未来都市の実現を目指し、新たな躍進を生み出す予算と特徴づけています。
日本共産党区議団は、2021年度予算審査にあたり、第一にコロナ禍で深刻な区民生活を直視し、暮らし、福祉、教育等、区民需要を最優先とした予算になっているか、第二に不要不急の事業をすすめようとしていないか、第三に今後の財政運営に支障をきたす予算になっていないか、以上3つの観点で審査に当たってきました。
◆では第一の観点、コロナ禍で深刻な区民生活を直視し、くらし、福祉、教育等、区民需要を最優先とした予算になっているかどうかについてです。
●まず、予算編成の基本姿勢についてです。
昨年第4回定例会、わが党ぎぶ議員の一般質問で「区民をコロナから守るために公助の強化をどうとらえているのか」と質したのに対し、区長は「まず自助があり、それを相互に助け合う共助に広げ、そして自助、共助では解決できない課題を公助として対策を講じていく、これが本区の基本的な考え方」と答弁しました。
これを踏まえて、私は本定例会の一般質問で「この『本区の基本的な考え方』が予算編成の基本姿勢になっているのか」と質問。しかし区長はまともに答えなかったため、改めて予算特別委員会の総括質疑の中で質しました。斎藤副区長は「リスクの状況によって、最適な方法を選んでいく」とか、「各分野の政策課題に対してそれぞれに自助、共助、公助の考え方が異なってくる」とか、結局「適材適所で」とごまかしたのであります。
本来、区の予算はすべて「公助」でなければなりません。それを「適材適所」というのであれば、すでにこの予算編成は失格だと言わざるをえません。
●次にPCR検査についてです。
一昨日、3月21日に緊急事態宣言が解除されました。冒頭述べた、わが党の新型コロナ緊急要請で提起した3点の検査拡充については、16日の参議院予算委員会の中央公聴会での小池晃書記局長の質問に、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長もほぼ全面的にその必要性を認めました。本気になって大規模検査を実行して封じ込めることが、いまこそ必要です。そのためには本来なら国や都がなすべきことですが、やらないのであれば、区が無料で検査を実施すべきです。
昨日22日、日本共産党区議団は区長に対して「新型コロナ感染再拡大を防ぐための大規模検査等を求める緊急要望(第9次)」の申し入れを行いました。PCR検査の拡充を改めて求めておきます。
また、わが党は新型コロナ感染症が拡大する中、エッセンシャルワーカーへの定期的な検査をと求めてきました。なかでも子どもと密に接する保育現場の拡充は待ったなしで、今年度は補正予算で検査費用補助が計上されたのは一歩前進です。来年度予算にも計上されていますが、「陽性者が出た場合」に限られています。
一方、来年度、介護、福祉サービス事業者等への平常時の早期発見を目的としたPCR検査費用助成が拡充されています。今、変異株の保育園でのクラスター発生など子どもへの感染が懸念されており保育現場でも同様の拡充をすべきです。
同時に、保育現場からは検査を受け陽性が判明し自分が休んだら職員体制が取れなくなると検査をためらう声があります。感染を広げないためにも安心して検査を受け休む時には休める職員体制が必要です。職員体制の拡充は職員の待遇改善とともに保育の質の向上にもつながります。
●次に住宅についてです。
住まいは人権です。区民が求めているのは低廉な家賃の良質な公営住宅です。区営住宅の入居倍率は2人世帯で16.7倍の狭き門。当選しても入居できない待機者が8名いるのに、千早4丁目アパートには空室が6戸もあり、長期に渡り放置されたままです。区は大規模改修に合わせて空室改修をといいますが、時期や予算など具体的な検討すらされていません。直ちに計画を立て大規模改修すべきです。
さらに住民から「隙間風が寒い」「共有部分もボロボロ」「空室が多いと防犯上不安」などの声を区が把握していなかったのも大問題です。これは区営住宅や福祉住宅、安心住まいなどの公営住宅の維持管理を民間へ委託し丸投げしてきた結果です。
そして区が議会や住宅対策審議会等への報告もなしに進めてきた、4月からの「住宅相談業務の保健福祉部への移管」は、住宅相談業務、家賃助成に関することなど多くの業務を移管するとしています。住宅課に残るのは安心住まいや区営住宅等の供給、維持管理、入居者対応、高齢者向け優良賃貸住宅、サービス付き高齢者向けの住宅の供給に関すること等です。しかしそのほとんどを民間委託し、入居者の声さえ把握できていないのが現状です。区はこの業務移管が「区民サービスの向上」につながるといいますが、公営住宅は増やさず移管を進めるのは住宅課を形骸化させるものにほかならず大いに問題があります。
●次に中小企業対策です。
コロナ禍の下、商店街では「大幅収入減でアルバイトにはやめてもらい、自宅で家族だけで何とか経営している。長引けば見通しは持てない」、個人事業主の方は、「昨年から全く仕事が無い。国の協力金で何とかやりくりしているが店と駐車場の家賃が大変」、家主さんは「家賃が入らず、困っている」など、大変深刻な声が次々と上がっています。
本区の直近3年間の倒産件数は59件、44件、今年は45件と横ばいですが、負債額は昨年14億円が今年は67億円で、中小企業の経営の深刻さは顕著です。しかし無利子の融資制度は今年1月までの9カ月間で1,308件と大きく伸びていません。区民からは「返せるかわからないのに借りられない」との声が寄せられています。
さらに深刻なのは家賃です。国の家賃補助制度は2月15日で終了。コロナ収束の見通しもない中、都の家賃補助も国の補完事業のため終了となっています。区独自に店舗への家賃補助制度を実施している区もありますが、本区は冷たく拒否しました。中小企業の店舗存続こそ重要であり、ただちに区独自の家賃補助をすべきです。
●次に生活保護、低所得者など生活困窮者への支援についてです。
長引くコロナ禍のもと、生活保護世帯や低所得者など生活困窮者の状況はより深刻で、全体的には生活困窮者への支援がまだまだ不十分です。
これまでわが党が一貫して求めてきた生活保護世帯へのエアコン設置補助について、私が改めて求めたところ、「来年度に検討していく」と答弁したのは一歩前進です。直ちに検討を進め、今年の夏までに設置するようにすべきです。
この間、国は保護費削減を進め、昨年10月、菅政権はコロナ禍でも食費、水光熱費などの「生活扶助」を大幅減額。また豊島区も行革で夏季加算などの法外援護を削減してきました。エアコンの修理、交換、電気代の補助などの法外援護についても拡充すべきと質したのに対し、区は「検討課題の一つとして検討していきたい」と答弁しましたが、コロナ禍の中で最も光を当てるべき生活困窮者への支援があまりにもお粗末すぎる予算です。
●次に子育て世帯への支援についてです。
まずひとり親世帯への支援は、児童扶養手当利用世帯以外へも広げるべきです。区は来年度創設の「(仮称)子ども若者支援基金」の活用を検討と言いますが、実施予定の11月まで待っていられません。ただちに予算の組み換えなどを行ない支援すべきです。
また「ひとり親世帯支援センター」の相談体制も相談者に合った制度や支援を提案型で示すこと、真にワンストップとなるよう各課の連携がスムーズにできる職員体制が必要です。そのためには子育て支援課だけでなく全庁的な職員体制の拡充をすべきです。
一方、ひとり親世帯だけでなく、ふたり親世帯の困窮も深刻で、3月2日、支援団体などが現金給付を求める5万人を超す署名を国へ提出。「新年度を迎える4月までに給付を」と訴えました。これに先立つ1月22日、日本共産党、立憲民主党など野党4党は、低所得の子育て世帯に給付金を支給する法案を衆議院に共同提出。こうした流れを受け、3月16日、菅首相はひとり親や所得が低い子育て世帯に対し、子ども1人当たり5万円を給付すると表明するなど、国も遅きに失したと言え少しずつ動き出しています。
子育て世帯の私費負担で特に重いのは給食費です。わが党は一貫して給食費無償化を求め、その第一歩として多子世帯への給食費補助の条例提案も行いました。改めてコロナで苦しむ子育て世帯の負担軽減のため、区として給食費無償化に踏み切るべきです。また就学援助を生活保護基準の1.2倍から1.3倍に引き上げるのに約700万円あればできるのです。基準引き上げをすべきです。
さらにコロナ以前から脆弱だった高校生以上への支援がコロナで浮き彫りになりました。高校生までの医療費補助の拡充とともに、貧困な高等教育政策のもとで高すぎる学費に苦しむ大学生への支援もすべきです。
●次に高齢者施策についてです。
・区有地を活用した特養ホームやグループホームなどの介護施設に対して2021年度限定で臨時特例的に土地賃料などの税制支援を行います。対象は社会福祉法人で想定額約6千万円、対象施設は10か所、単純計算で1か所あたり600万円です。
この事業については評価しますが、他の介護事業者も大変ひっ迫した経営状態なのは同じです。豊島区は今年度、介護施設1か所あたり10万円の支援金を支給しましたが、まだまだ足りません。介護事業者への家賃補助、従事者への直接補助、再度の支援金支給もただちにやるべきです。ケアに手厚い社会をつくることが重要です。
・在宅高齢者への支援も不可欠です。高齢者が安心して在宅生活を送り続けるためには、その人の生活や障がいにあった支援策が求められます。階段昇降機もその一つです。この間、わが党は一般質問等でも取り上げてきましたが、今回、高齢者福祉課より「検討」との答弁がありました。一人でも多くの高齢者が在宅で生活できる条件整備を直ちに行うべきです。
●次に職員体制についてです。 委員会では、保健所と防災についての職員体制を取り上げました。
・保健所職員の皆様が昼夜を分かたず感染症に対応されていることに対し感謝申し上げます。
保健所の感染症グループでは庁内の他職種からの支援と看護師、保健師、事務職等を派遣会社からの派遣職員で対応するなど、大変厳しい職員体制の実態が明らかになりました。今後もワクチン接種を含め、保健所業務はさらに大変になることは明白です。来年度は保健師5名を新規採用予定でしたが、正規では3名しか採用できず、あとの二人は派遣となるそうです。平常時からの保健所体制の強化が必要だったのです。
保健所は、感染症だけでなく、精神衛生、食品衛生、母子保健といった「公衆衛生」の「かなめ」であります。速やかな体制の拡充と合わせ、この間一般質問等でも取り上げてきましたが、長崎健康相談所を保健所に戻すことを検討すべきですが、区はやろうとしません。
・次に防災についてです。
3月11日には東日本大震災10年を迎えました。多くの被災者が暮らしも生業も取り戻せないと言われている中、一日も早い被災者中心の復興が求められます。
さて、本区においてもいつどのような災害が起こるかわからない中で、区民と来街者の命を守るためには区行政は公的な機関として最大の構えが求められます。昨年来35の救援センターの確立に向け、地域との協力の下で、職員の配置やコロナ対策等、大変きめ細かな訓練や準備等が実施されていることがわかりました。また備蓄倉庫の拡充も徐々ではありますが行われ、来年度予算で段ボールベッド、段ボール仕切りの追加備蓄があったことは評価しますが、まだ足りません。さらなる増額を求めます。
一方、防災危機管理課の正規職員は、来年度2名の女性職員が配置予定であることは評価しますが、職員数は昨年同様16名のままです。職員数が増えなければ、現場の忙しさは変わらず、これでは災害が起きたとき、まっとうな対応はできません。災害時には防災危機管理課ではない約240名の区職員がそれぞれの救援センターを担当すると、訓練等も行われています。しかし災害が複雑になる中で、改めて防災危機管理課の職員の増員を強く求めるものです。
●次に施設計画についてです。
昨年2020年7月に区は新型コロナの影響で公共施設の改修、改築計画を一旦立ち止まり見直すとしました。すでに契約を締結している施設等は一部工事が再開されていますが、旧朝日中学校跡地への特養建設や雑司ヶ谷体育館の大規模改修など、計画の見直しが検討されています。また、学校改築や障害者の方のグループホームも先送りになっています。渡辺議員が障がい者の親亡きあとの問題を取り上げましたが、ようやく完成した池袋の施設に入所できなかった方々の切実な思い、次の施設建設を待ち焦がれる思いを区長はどのように認識しているのでしょうか。
学校施設の長寿命化計画も本当ならこの3月に策定予定でしたが、いまだに示されていません。特別養護老人ホーム建設についても、区は2017年に計画を発表、当初計画では2022年に竣工予定でしたが、いまだに計画の具体化が進んでいません。地域からは「いつできるのか」「区は本当に作る気があるのか」など不安の声が出ています。特養を必要としている高齢者はこれまで豊島区をつくってきた、支えてきた方々です。SDGs誰ひとり取り残さないというのであればただちに旧朝日中学校跡地に特養建設をすすめるべきです。
そして私が区全体の施設計画を示すよう求めても、区は示すことはできない理由をコロナの影響としました。しかし、老朽化した学校施設、区民に身近な区有施設などの改修改築が必要なことはコロナ以前からはっきりとわかっていたことではありませんか。区長が進める東アジア文化都市記念事業23事業はスケジュール通りにどんどん進んで完成しましたが、区民が求める特養ホームやグループホーム、学校、区有施設の改修改築が先送りになっています。
ただちに豊島区全体の施設計画を立て障害者、高齢者、また区民が利用する施設の改修改築を進めるべきです。
以上が第一の観点であります。
◆次に第二の観点、不要不急の事業を進めようとしていないか、について三点述べます。
●最初に住民不在のまちづくりについて2点述べます。
・一つ目は市街地再開発事業についてです。?来年度の投資的経費は、対前年度比7億9千万円の増、4.8%プラスの172億3千万円です。これは現在進行中の3つの地区の市街地再開発事業、池袋二丁目C地区が29億83百万円の増、東池袋四丁目2番街区地区が19億11百万円の増、さらに東池袋一丁目地区が2億79百万円の増、合わせて51億73百万円の大幅な増となったためで来年度予算案の特徴の一つとしています。?
区は「市街地再開発事業は、国庫補助金及び都市計画交付金の交付対象となり、残る区負担分は、特別区財政調整交付金の基準財政需要額として算定されるため、原則として区の負担はない」といいます。?
しかし特別区財政調整交付金は2020年度予算で303億円見込んでいたのが、算定結果は288億円で15億円減りました。さらに来年度は、前年度対比で11.3%の大幅マイナス、36億円の減となる見込みです。このように特別区財政調整交付金の見通しが厳しいということは、他の事業に大きく影響を及ぼすということであり、今後の財政運営に支障をきたすということです。
今、多くの区民がコロナ禍で厳しい生活を強いられている中、大企業をもうけさせる一方で、この間の様々な市街地再開発事業では6割近くの区民が追い出されているのです。多額の特別区財政調整交付金を使い、区民追い出しの市街地再開発事業は認められません。?
・二つ目は木密対策のまちづくりです。
東京都の木密対策10年プロジェクトが終わり、来年度から今後5年間継続することが決まりました。決算でも取り上げましたが、東池袋4丁目C街区では、木密対策を口実に都市づくり公社が12階建て77戸のファミリー住宅を造る計画を示しています。事業者は 住友建設ですが、?近隣の低層の住宅地はほとんどが日陰になり、住民からは低層の建物をとの声が上がっています。区は建て替えができない方々への対応と言い、低層の住宅建設では「事業としてなりたたない」と繰り返しています。木密対策であるなら「儲けの事業」ではなく安心安全なまちづくりのための事業とすべきです。?
●不要不急の事業の二つ目は、イケバスについてです。
わが党区議団は、池袋駅を中心とした大型開発、ハコモノづくりに莫大な税金を投入するより区民のくらし、生業を守ることを優先すべきと見直しを求めてきました。
特にイケバスは、訪日外国人や観光客を乗客として、4つの公園と池袋駅周辺を回遊する観光が目的でしたが、ガラガラで乗客はほとんどいません。区民から「もったいない」「税金の無駄遣い」との声が、わが党に寄せられています。当初、イケバスの乗客は1日1100人、月に33,000人の乗客を想定し、年間180万円の黒字を見込みスタート。実際には昨年10月の9,200人が最高で、平均でひと月に5,000人程度。その赤字を補填するため、今定例会の補正予算で1億4400万円余を計上し、今年度は合計2億132万円となり、当初予算の約3.6倍に膨らみました。来年度予算でも1億4200万円余を計上しています。すでに区財政の重い負担となっているではありませんか。新型コロナの収束も見通せない中、収支の改善を図るすべもありません。トップダウンですすめた区長の責任は重大です。イケバスは、キッパリと中止すべきです。
●不要不急の事業の三つめは、コロナ禍における文化施策についてです。
トキワ荘マンガミュージアム管理運営経費として来年度予算で2億800万円が計上されています。そのうち新規拡充の「多言語対応等環境整備」はオリンピックパラリンピックに向けたインバウンド対策で2700万円の単年度の予算、もう一つの「企画展示等の拡充」に3,500万円は年3回の企画展示の予算です。
すでに今年度、1企画当たり1,500~1,700万円の予算で、特別展が2回企画され、緊急事態宣言で1月から予定していた特別展は延期されているところです。
しかし私が2019年10月、子ども文教委員会で「トキワ荘マンガミュージアム条例」を審査した際、維持管理経費は1億円を見込んでいると答弁しました。翌20年2月、オープン間近の子ども文教委員会への報告では、初年度なのでいろいろと積みあがったと20年度当初予算は1億4千万円に膨らみ、さらに21年度の当初予算は約2億円。一年余りで1億から2億円と倍に増え、今後も同程度の予算を見込んでいるとしています。同じ区の文化施設である鈴木信太郎記念館の維持管理経費の1,500万円と比べて、けた違い、あまりに額が大きいのではありませんか。
わが党は決して文化を否定するものではありません。しかし区長の推進する文化は多額の税金を投入し来街者を呼び込むもので、新型コロナの収束すら見えないこの時期にやるべきものではありません。何よりもまず新型コロナ感染拡大防止と区民生活の救済が最優先です。どうしてもやるというのであればコロナ収束後にすべきです。以上が第二の観点であります。
●次に第三の観点、今後の財政運営に支障をきたす予算になっていないか、についてです。
わが党区議団は、文化やにぎわいを口実に池袋駅を中心とした大型開発、ハコモノづくりに莫大な税金を投入するまちづくりは、将来の財政運営に支障をきたす可能性があることを指摘し、見直しを求めてきました。
とりわけ、総事業費459億円の東アジア文化都市記念まちづくり事業は、2019年度に「100年に一度の大変革」と位置付けた集中投資をおこない、新ホールや四つの公園とイケバス、市街地再開発事業を進めてきました。
その一方で、老朽化の著しい学校改築や朝日中学校跡地の特養ホームの建設等が後回しにされ、区民にとって必要な公営住宅の増設もしないなど、必要な事業は見送ってきたことは、先ほど指摘したとおりであります。
区長のすすめる池袋を中心とした大型開発、ハコモノづくり、人を呼ぶためのイケバスなどは、SDGs未来都市実現を目指し、新たな躍進をもたらすと区長は、いいますが、今後の財政運営に大きな支障をもたらすことになってしまったのです。
『としまのお財布』では、今後の財政運営を考えた時、不合理な税制改正の影響額は、令和2年度が70億円、令和3年度が77億円、これまでの累計影響額は308億9千万円で、これは小学校8校分の建て替え経費に相当するとしています。
また、コロナ禍の中での財政運営についてみてみると、特別区民税の落ち込み、財政調整交付金の落ち込みは深刻なものがあります。過去にもリーマンショックの影響からの落ち込みから回復するのに相当の年月がかかったのですが、今回のコロナ禍の中での影響は、リーマンショック以上の落ち込みが想定されます。
リーマンショックが起きた平成21年度から25年度の五年間は、合計69億円の財源対策を講じたのですが、来年度予算では単年度だけで、同額の69億円も対策しなければならなくなったわけです。
私がこのことを指摘し、来年度以降の見通しを質しても財政課長は、「わかりません」というばかり。今後の財政運営については見通しがたたないというわけです。
はっきりしているのは、東アジア文化都市記念事業の維持管理経費については、はじめの10億円が13億円となり、来年度の当初予算では13億7200万円とさらに膨らみ、コロナの影響ではさらに膨らむ可能性が大きいと答弁しているように、区長の夢の投資がお荷物となって、予算に大きく影響しているのははっきりしています。
以前、財政が逼迫した時、聖域なき削減で、区民サービスが引き下げられ、暮らし、福祉、教育、営業が削られてきました。区民犠牲の財政運営を二度と繰返してはなりません。
ところが区長は、厳しい財政状況を乗り越えてきた過去の経験を活かし、慎重な財政運営を心掛けるというだけで、「区民サービスを削ることをしない」ということについては、明言しませんでした。
過去に厳しい財政状況を乗り越えてきたといっても、区民サービスを削ってお金を浮かしてきたやり方ではありませんか。今回の予算案は、不要不急の事業はないと言いますが、今後の財政運営について支障をきたす予算案であることが明らかになりました。
以上 大きく3つの観点から来年度予算案についての、意見を述べてまいりました。
本予算には、わが党が求めていた施策、例えば昨年コロナで実施できなかった戦後75周年記念事業の実施や商店街プレミアム付き地域商品券補助事業など、拡充されたものがあります。さらには委員会審査の中で、前向きの答弁が得られた少人数学級の拡充などもあり、これらは評価できるものです。しかしながら、これまでのべたとおり、第一にコロナ禍で深刻な区民生活を直視し、暮らし、福祉、教育等、区民需要を最優先とした予算になっていない、第二に不要不急の事業をすすめようとしている、第三に今後の財政運営に支障をきたす予算になっている、以上のことから、一般会計予算について反対するものです。
また予算特別委員会でわが党が提案した「予算の組み換え動議」は、一般会計について緊急かつ必要最小限の組み換えを要求したものです。しかし他会派の委員からは動議に関する質疑は一切ないまま、自民党、公明党、都民ファーストの会・民主、無所属の会、立憲としま、テレビ改革党によって否決されてしまいました。わが党の区民生活を支える最低限の組替え動議に対して何の質問も意見もなく、否決されたことについては大変残念であります。
区長に置かれましては補正予算を組んででも、区民の立場で予算修正することを強く求めておきます。
◆次に、3特別会計について述べます。
●まず、国民健康保険事業会計についてです。
2021 年度の国民健康保険料は、所得割率で0.11%の引き上げ、均等割額は800 円の引き下げで、単身などの低所得者層は引下がるものの、年収300 万円以上は値上げの傾向です。さらに介護分の引き上げで40歳以上の子育て世代は値上げとなりました。
今回激変緩和措置については、当初計画で21年度は法定外繰り入れを3%としていたものを、新型コロナ感染拡大の影響を踏まえて、今年度と同様に4%にしたことで、低所得者の保険料が下がったのです。
激変緩和措置は2018年度に6%の法定外繰入を行い、これを毎年1%ずつ縮減し6 年間でゼロにするというものです。21 年度は4%に据え置くことにしましたが、来年度以降、どうするか決まっていない、しかし23年度には繰入れをゼロにする方針には変わりないというのであれば、来年度以降、大幅な値上げの危険性もあります。来年度は法定外繰り入れの削減をやめたのは良いが、今でも高い保険料がこれ以上上がったら払えなくなります。高すぎる保険料を下げるために区の法定外繰り入れや国や都の財政支出が必要です。
また子どもが多いほど負担が重くなる均等割りについて、国は未就学児を対象に2022年度から半額にする減免の実施を示しています。わが党区議団は均等割りの減免について、これまでも議案提案もしてきました。豊島区独自に就学前の子どもの均等割りを2分の1補助する経費は約3,900万円あればできるのです。来年度実施するとともに、未就学児だけでなく、小・中・高校生も補助すべきです。
資格証、短期証については、「新型コロナ感染症の影響により」、「区が特に必要と認めた世帯」に発行するとして、これまでの運用が変更されたのは一歩前進です。しかし、豊島区の資格証、短期証の発行数は、23区では圧倒的に多いほうです。今後も、区民の生活に寄り添った対応で、発行しない状況を継続すべきです。
●次に後期高齢者医療会計についてです。
菅内閣は2022年から、単身で年収200万円以上の75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げることを含む医療制度改定一括法案を国会に提出しています。
対象者は全国的には370万人と言われており、本区でも約5,000人と言われています。団塊の世代が高齢者になることを理由に若い人の負担を抑えるためといいますが、高齢者は年金だけでは生活できないのが現実です。これでは受診抑制を引き起こし、重症化を招くことは必至です。この間、保険料は、2年ごとの改定時に毎回値上げされ、さらに軽減措置が次々と廃止されてきました。その上、医療を受ける権利まで奪う、このような後期高齢者医療制度は認められません。
●最後に介護保険事業会計についてです。
今定例会では保険料値上げ案が提案され、第5段階の基準額が月6,090円が6,200円に、年間では73,080円が74,400円と値上げになります。このような値上げ案は認められません。
今年度で選択的介護モデル事業が終了します。来年度の予算では「選択的介護」のチラシ等の宣伝費として362万円計上、その2分の1の181万円が都の高齢社会対策区市町村包括補助金として支給されますが、利用者への補助はありません。
この間、国は改悪に次ぐ改悪で、ますます「保険あって介護なし」の状況を作ってきました。高い保険料を払っても必要な介護が受けられない中で、「選択的介護は介護の有料化への道づくり」と指摘し、わが党は反対してきました。本来、必要な介護は介護保険で給付すべきだからです。
モデル事業3年間の結果は、参加事業者は当初の10事業所のみ、利用者は実人数でわずか59人、結果的には国家戦略特区にも認められず、他の地域にも一切広がらないままでした。これを反省し、必要な介護はきちんと介護保険を使えるようにすべきですが、区はそのつもりはありません。以上のことから三特別会計予算に反対いたします。
以上で私の討論を終わります。御清聴ありがとうございました。