私は日本共産党豊島区議団を代表しまして、ただいま議題されております3陳情第2号羽田空港への新飛行ルートの見直しを求め、豊島区議会から意見書提出を求める陳情について、及び3陳情第5号 IKEBUSの運行中止を求める陳情について、不採択することに反対し、ただちに採択することを求めて討論を行います。
まず、3陳情第2号 羽田空港への新飛行ルートの見直しを求め、豊島区議会から意見書提出を求める陳情についてです。
この陳情は、羽田新飛行ルートの運用が昨年3月29日から始まり、騒音、落下物、振動、排気ガスなどへの不安や懸念、危惧が大きくひろがっているので、区民のくらし、生命を守る立場から羽田新飛行ルートの見直しを求める意見書を国と都に提出することを求めるものです。
羽田新飛行ルートは、住民にとって百害あって一利なしです。都心上空の飛行を許せば拡大される恐れがあります。国は市民の安全を第一に考え、新ルートの見直しをすべきです。以下、採択する理由を述べます。
第一に騒音被害についてです。
従来の羽田飛行ルートの原則は「海から入り海へ出る」ものでした。騒音や落下物に配慮したからです。新飛行ルートは、市民の命、くらしを脅かします。成田空港開港の目的は、羽田の混雑緩和や騒音対策などでした。羽田空港の沖合展開も人口密集地を避けることと騒音防止策の一環でした。
ところが、安倍前政権は、昨年の3月に、新ルートの増便で世界からヒト、モノ、カネを取り込み、国際競争力を強化するとした成長戦略を掲げ、住民の理解も合意を得ずに強行実施したのです。
豊島区の上空を約1000m、新宿都庁上空で900m、恵比寿駅上空ではスカイツリーよりも低い約600m、品川区の大井町上空では東京タワーより低い約300mまで高度を下げ超低空飛行で羽田空港に向かいます。その上、頻度は最大で朝の山手線のラッシュ時並みに2分に一機が轟音を響かせて飛行します。この間、豊島区民から「テレビの音がききづらい」「コロナ禍で窓を開けているのでテレワークが、なかなか進まない」などの声が15件、区に寄せられ、昨年の10月までに国に5,150件、東京都に318件の苦情などが寄せられています。
羽田空港に近い品川区や渋谷区ではもっと深刻です。航空機騒音による影響は、ただうるさいという問題でなく、健康被害を及ぼすレベルです。騒音が、健康被害を及ぼすことは世界でも研究がすすめられWHOも是正勧告をだしています。人の健康を守るために1日平均の騒音指標の一つであるエルデン(Lden)を45以下にすることを強く警告しています。エルデン(Lden)とは、航空機騒音は、夕方の騒音は約3倍、夜間の騒音は10倍に重み付け(補正)を行い評価した1日の等価騒音レベルとして示したものですが、品川駅付近での測定結果は、エルデン45以下になったことは、本格実施されて以降、2日しかなく、健康被害を及ぼすレベルの騒音が毎日のように住民に降り注いでいるのです。
第二に、着陸時の進入角度を国際標準の3度から3.5度へと急角度引き上げたことについてです。
これにより、飛行高度をさらに引き上げ、騒音を減らせるとしましたが、この急角度の着陸は、騒音対策としては、ほとんど効果をあげないばかりか、着陸の難易度を格段に上げ、事故のリスクをたかめます。
世界の航空会社の8割以上を占める国際航空運送協会(IATA)と世界104か国のパイロットが加盟する国際定期航空操縦士協会連合会(IFALPA)は国交省を直接訪問し、「世界の空港に例のない特別な操縦技術を求められる。大型機が頻繁に着陸する世界の大規模な空港で、この角度で飛んでいるパイロットはいない」「通常とは異なる操作が必要で、ハードランディング(衝撃を伴う着陸)を引き起こす危険性が増大する」と警告しています。世界の航空団体がこぞって国交省に出向いて意見を述べたこと自体異例な事であり、それだけ危険な着陸方法であるということです。しかも、両団体ともこの着陸方法は、騒音対策の効果はほとんどないとしています。国はなぜ騒音軽減に効果がなく、より危険な着陸方法を考えたのでしょうか。新ルートは米軍横田空域内を一部飛行することになり、旅客機が空域内を低空飛行すれば、米軍の訓練などに制約がかかる恐れがあるとされました。そこで、当初よりも旅客機を高高度から着陸させ、米軍機との間隔を確保することを考えたのです。つまり、騒音対策としてではなく、米軍の訓練や安全を優先することが狙いでした。
第三に、落下物は避けられないからです。
航空機化の落下物や墜落事故が万が一にでも発生すれば、命にかかわる重大な事故へ発展します。
2月20日アメリカのユナイテッド航空機、ボーイング777型、エンジンが爆発して、部品が住宅街に落下する衝撃的な事故が発生しました。私が、この事故を区は、どう受け止めているのか、と質すと、区は、「国に対して、安全対策を万全にしていただくことを要請している」と答弁しましたが、過去にもオランダや那覇空港でも同系列の機体・エンジンの破損・落下物事故もありました。航空機からの落下物や墜落事故が万が一にでも発生すれば、命にかかわる重大事故へと発展します。国が実施している航空機からの部品欠落調査によれば、2020年3月末時点の約2年間で1,416個の部品が欠落したとしています。つまり、1日に2個も航空機の部品が欠落している計算になります。45年間整備士を務めた方は「落下物はなくならない。だからこそ、落下物は落ちる前提で、2次被害を生み出さないことを考えるのが落下物対策の基本」と話します。新ルート直下には、住宅、学校、保育施設など数多くあり、火力発電所などもルート付近にはあります。その上、これまでは飛行禁止とされていた石油や危険物を多く取り扱う川崎コンビナート上空も新ルートは含んでおり、重大な2次被害を防ぐには、新ルートの中止こそ一番の安全対策です。
わが党は、再三、区に対して、教室型の住民説明会の開催、新ルートの撤回を求めて来ました。2019年7月30日に開催の羽田空港の機能強化に関する都政及び関係区市連絡会にむけて、当時の呉副区長にも同様な申し入れを行いました。しかし、東京都は8月7日の協議会で、これまでの国の取り組みを評価して2020年3月に予定通り新ルートを実施するよう要望したのです。品川区議会では、新ルートを容認できない決議が全会一致で可決され、渋谷区や港区の区議会でも新ルートの見直しを求める意見書が採択されました。安倍前首相は、新ルートの実施には「地元の理解」が必要と繰り返し約束してきたので、国は窮地に陥っていましたが、都の発言で国の窮地を救い、新ルート実施の一番の役割を果たしたのです。都民の反対や区議会の見直しを求める声が広がっていることを小池都知事は知りながら、国と一体となって新ルートを強行した小池都知事の責任は重大です。
委員会審査では、自民党、公明党、都民ファーストの会・民主、テレビ改革党などは、「国も万全の対策をとっている」「区も国に要望するなど対策をとっている」「交通事故で亡くなる方は2,839人、だから豊島区から車を締め出せとはならない」などと不採択を主張。立憲としまは、継続審査を主張しましたが、継続が否決されると、無所属の会、共産党など3会派は採択を主張しましたが、賛成少数で陳情は不採択となりました。
前にも述べましたが、この陳情は、区民のくらし、生命を守るために都心部を超低空飛行する新ルートの見直しを求めるものです。新ルートは住民にとって百害あって一利なしです。
よって、3陳情第2号 羽田空港への新飛行ルートの見直しを求め、豊島区議会から意見書提出を求める陳情をただちに採択することを求めるものです。
つづきまして、3陳情第5号 IKEBUSの運行中止を求める陳情について、です。
この陳情は、IKEBUSには、乗客がほとんどいないことに不安を覚えること、当初、年間180万円の黒字を見込んでスタートしたが、コロナ感染拡大の影響もあり、赤字が億単位に膨らんでいることなどから、運行を中止し、関係者や区民の声を聴き、見直しを求めるものです。
イケバスは池袋駅周辺と四つの公園を回遊し、訪日外国人を呼び込むツールとして導入したものであります。区民が、乗客がほとんど乗っていないイケバスを見て、億単位の赤字をだしつづけたら、不安に思うのは至極当然なことです。しかも、新型コロナウィルス感染症の収束の見通しがつきません。 いま求められているのは新型コロナ感染症対策に全力を尽くすことです。以下、採択すべき理由を述べます。
わが党区議団は、これまで高野区長の訪日外国人や観光客を呼び込む街づくり、文化やにぎわいを口実に池袋駅を中心とした大型開発、ハコモノづくりに莫大な税金を投入するより区民のくらし、生業を守ることを優先すべきと指摘してきました。区議団には区民から様々な声が寄せられています。少し区民の声を紹介しますと、「ガラガラのイケバスが次から次へと走っているのを見るのは大変つらい、心が痛みます」、「税金の無駄遣いの最たるものだ」「無駄遣いよりコロナ対策を優先すべき」などです。
2019年度は、イケバスにイニシャルコストとランニングコスト合わせて総額5億円以上もつぎ込みました。コロナ以前の乗客は、2020年1月に無料券を配るなどして13,000人で最も多い月です。2020年度は、さらにコロナ感染拡大がひろがり、乗客は徐々に減り4月、5月、6月は運休し7月からはイケバスを減便して運行しましたが、乗客はほとんど乗らず、ガラガラの赤バスが列をなしている状況も見受けられました。
今年度の収支は当初、イケバスの乗客は1日1100人、月に33,000人の乗客を想定し、年間180万円の黒字を見込みしました。実際には昨年10月の9,200人が最高です。そのため赤字を補填するため、今定例会の補正予算で1億4465万円予を計上し、合計で2億132万円となり、運行経費は当初予算の約3.6倍に膨らみました。副都心委員会でも指摘しましたが、乗客や収入の過大な見込であることを指摘しましたが、まさにそういう事態が進行しています。
私が収支のバランスが取れるのはいつになるのかと質すと、区は「一般質問の中でも、5年、10年と区長から答弁させていただき、区も鋭意努力をしています」と答弁しました。このままでは赤字を増やすだけです。
一方で、新型コロナ感染症の拡大の影響で、区の歳入環境は、急速に悪化しています。特別区民税は17億円、特別区財政調整交付金は36億円、地方消費税交付金は13億円の減収で、基幹歳入の減収規模は合計で66億円と想定し、その財源不足を補うため財調基金69億円を取り崩しました。リーマンショック以上の衝撃です。
リーマンショックの際に、特別区民税が回復するのに5年、特別区財政調整基金の回復には10年かかりました。来年度予算では、2億円余が計上されていますが、このまま推移するなら、ざっくりですが5年で10億円、10年では20億円となります。歳入は大幅に減収となり、イケバスの経費が、大きな財政負担となるのは必至です。
今、やらなければならないことは、コロナ対策です。
区民はコロナ危機の下で、くらしと営業は、いっそう窮地に追い込まれています。今年度のコロナ対策として計上しているものは、55事業費で334億円ですが、一般財源では25億円、わずか3.3%しか投入していません。まちづくり記念事業は、事業費で244億円、一般財源は55億円、約23%です。
一般財源ベースでは、コロナ対策よりも大型開発優先のまちづくり費用が多いのです。区のコロナ対策費は、事業費では96.7%が国庫負担などです。
来年度予算でも感染拡大防止対策と経済支援に29事業、約14億円しか計上されていません。この対策ではコロナ禍のもとで、苦しんでいる区民の実態に、まともに向き合おうとしていません。区は、倒産、廃業に追い込まれた事業所や疲弊している医療機関、介護事業所など実態がみえないのでしょうか。今、求められているのは、PCR検査の拡充、医療機関、介護事業などの減収補填、中小業者対策など区民のくらしと命をまもることです。
委員会審査では、自民、公明、都民ファーストの会・民主は、「イケバスは池袋の顔」「池袋というブランドを高める」「街の回遊性を高めて価値をたかめる」「黒字化するのはそんな先ではない」などと言って不採択を主張。無所属の会と立憲としまは、継続を主張しましたが、継続審査が否決されると、不採択としました。
新型コロナの収束も見通せない中、収支の改善を図るすべもありません。トップダウンですすめた区長の責任は重大です。訪日外国人客誘致を口実にして、池袋周辺の大開発、イケバスの導入は、間違いであったことを認めるべきです。
よって、3陳情第5号 IKEBUSの運行中止を求める陳情は、ただちに採択することを求めるものです。以上で討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。