私は日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております第78号議案、豊島区立保育所条例の一部を改正する条例に対し、可決に反対の立場から討論を行います。
この議案は区立駒込第二保育園を廃止し、社会福祉法人若草保育園に土地、建物などを無償で貸し付け、民営化をするものであります。
わが党は、民間の認可保育園が果たしている積極的な役割を十分認識しています。社会福祉法人「若草保育園」は区内で長年にわたる実績があり、地域で信頼の厚い保育園であります。
しかし、いま区がすすめている民営化は、保育に対する行政の責任を放棄するものであり、容認することができません。以下、反対の理由を3点、述べます。
反対理由の第1は、保育に対する公的責任を放棄するものであるからです。
区は公立園の果たす役割について、「重要」という認識があるにもかかわらず、2014(H26)年9月の政策経営会議で、地域的な条件等から総合的に勘案して今回を含めた3園の民営化を決定したとしています。決定当時の2014年は区内の公立園19園に対して、私立認可園は11園でした。しかし現在は、公立園19園に対して、私立園は67園。決定当時と比べると私立園は6倍にもなっているのです。公立園にはすでに実施している小規模保育所との連携に加えて、地域の私立園とのグループ化、ネットワークの構築などが検討されています。地域の保育の核としての役割がさらに求められるのに、公立園を増やすことはあっても、減らすことはあってはなりません。
今年4月、緊急事態宣言時に保育園が休園になった際も、まず公立19園が応急保育を率先して行い、その後、私立園での自園保育へとつながったのです。「保育の質」の確保からも、新型コロナなど緊急時の対応からも、公立園の果たす役割は重要です。
区は民営化のメリットとして、保育時間の延長、休日保育などのサービス向上や、区民ひろばや児童相談所など保育士ニーズが高まる中、保育士職員の人材活用などを挙げています。
保育時間の延長、休日保育は保護者の要求であり必要なことではありますが、保育の質の向上ではありません。逆に現状の保育士不足のなか、現場へのしわ寄せと「保育の質」が低下する懸念があります。保育士職員の人材活用についても、これまで区がきちんと保育士を採用し、育ててこなかったその結果ではありませんか。区には保育の継続性、公共性、専門性を果たす役割があるのですが、これでは、その責任を果たすことができません。
反対理由の第2は、保護者の願いに応えていないということです。
今回の民営化にあたっては、今年4月から一年かけて引継ぎをする計画だったのが、新型コロナの影響で10月から半年間での引継ぎとなってしまいました。10月から週2、3回、事業者の保育士が現場に来て区立の保育士と一緒に保育を行い、来年1月からは4月からの体制とほぼ同じで、回数も増やし、計画的に行うとの答弁でした。
また保護者から要望の多かった行事の引継ぎについても、コロナの影響で行事がほとんどなくなり、事業者の保育士が行事に参加して引継ぎができない状況です。
短期間での引継ぎに加えて、大幅な保育士の交代は子どもたちの成長に影響を及ぼし、現場の保育士、職員には過重な負担となります。今年は新型コロナというこれまで経験したことのない状況となっています。決まったことだからとスケジュールありきで進めるのではなく、いったん立ち止まり見直すべきは見直す、子どもたちや保護者の願いに応えることが必要です。
反対理由の第3は、民営化の目的が経費削減であり、結局、保育の質を下げることになるからです。
これまでの民営化では施設を大規模改修してから事業者に引き渡していました。しかし駒込第二保育園は2010年(H22)に耐震診断を実施し、現状のままで問題ないとのことで、2015、16年度(H27、28)にトイレ改修、バルコニーや屋上の防水、外部フェンスなどの改修にとどまっています。理事者は民営化に向けた改修だったとしつつも、すでに築40年を超える施設であることから、今後10年以内に建て替えなどの大規模工事が必要と答弁しました。
建て替えの場合、現在と同規模園で区の概算では建築費が5~7億円、解体費1億円です。その際の費用負担は、民営の場合は、全体の4分の3が国、都、区からの補助があり、事業者負担は4分の1です。
いただいた資料によると、すでに民営化された同規模園(西池袋そらいろ保育園)が2018、19年度(H30、R元)に建て替えをした際、設計費、解体費を含めた総事業費5億円の内、区負担は7500万円でした。しかし公立園での建て替えだと、国、都からの補助は一切なく、すべて区の一般財源での負担となります。一方、事業者は補助があるとはいえ、1億2千万円余の負担でした。低すぎる公定価格の中から事業者は建設費を捻出しなければならず、保育士の給与を削ることも考えられます。もともと低い保育士の給与がさらに削られれば保育の質は下がらざるをえません。このように民営化は経費削減を優先させ、安上がりの保育行政を進めるものであり、民営化はきっぱりとやめるべきです。
これまで自民・公明党政権は「認可保育所をつくってほしい」という保護者の願いに十分こたえることなく、「基準緩和」と「詰込み」で、民間・企業頼みの安上がりな保育を推進しました。
2015年からは「子ども・子育て支援新制度」を導入し、自治体の保育の公的責任を後退させ、規制緩和と企業参入を拡大し、保育の質の低下をもたらしています。ビルの一室、園庭・ホールのない保育園も増え、保育環境は次々と後退しています。深刻な保育士不足についても、根本的な配置基準の引き上げはなされず、賃金の底上げは進んでいません。
昨年10月から始まった幼児教育・保育の無償化の財源は消費税増税に頼り、しかも全国的には、給食費の実費徴収や公立園の廃止を加速させる仕組みをつくるなど、公的保育制度を後退させるものになっています。このような自民・公明政権の制度改悪に与して、区が保育の民営化をこれ以上進めることはきっぱりとやめるべきです。
以上、三つの問題点を指摘しまして、第78号議案、豊島区立保育所条例の一部を改正する条例に対し、可決に反対をするものです。以上で討論を終わります。ご清聴有難うございました。